儚い夢 中編
彼女は願っていた
「葉留佳が助かっていますように」
実際彼女の頭の中はそればっかりだった
ある種それも彼女の”夢”だったのかもしれなかった
ここで思い出してみよう
夢は今その人のしたいことを映し出すことを
『儚い夢』
佳奈多は一人中庭にいた
「おねーちゃん、やほ~」
葉留佳が生け垣から顔を出してきた
「は、葉留佳どうしてあなたがここに?」
「だって私たち、姉妹デスヨ。近くにいてもいいじゃないデスカ」
「そ、そうね」
「どうしたんですカ?顔赤いよ~」
「う、うるさいわね」
「はは~ん照れてマスネ」
「///…っ」
「また赤くなった!もう照れ屋さんデスネ」
そんな和やかな空気が流れているのを
佳奈多は“見ていた”
そう
ここは佳奈多の夢の中だった
ピピピ…ピピピ…ピッ
いつもの癖で目覚ましを付けていたらしい
「はあ…」
なぜあんな夢を見たのかわからないが佳奈多は信じていた
(葉留佳は生きているはず、絶対に)
そう自分に言い聞かせて佳奈多はゆっくり起き上がった
ガヤガヤ…
廊下あえていうなら学食の方が騒がしい
(まさか!!)
佳奈多は急いで部屋を出た
(やっぱり…)
テレビの前には人だかりが出来ていた
「ちょ…前通して!!」
佳奈多は人を掻き分け一番前まできた
テレビの画面にはヘリからの映像が流れていた
真ん中に焼け焦げたバスが一台見えた
画面からキャスターの声が聞こえた
《このバスは・・・高校の二年・・・組が乗っていたと見られています》
周りのざわめきの所為で聞こえない部分があったが確実にわかった事があった
(あのバスはっ)
そう、もうそれ以外なかった。
(葉留佳が乗っていたバス!!)
フラッ・・・
佳奈多はその場で倒れ込んだ
「ん・・・?」
かなたは目が覚めた
視界の中には白い天井
そこが保健室だと気づいたのはもう少したったあとだった
「あっ、起きた?いきなり倒れたからびっくりしたって運んでくれた子いってたわよ」
「ああ・・・はい・・・」
「どうしたの顔色悪いわよ」
「いえ、別に何ともないです・・・」
けど今の佳奈多の中はあることで一杯だった
(バスはどうなったの!?)
佳奈多は聞いてみることにした
「そういえば、先生」
「ん?」
「あのバスに乗っていた人たちってどうなったんですか?」
その時先生の顔が一気に変わった・・・悪い方向に・・・
「どうしても・・・聞きたい?」
佳奈多は覚悟を決めた
「はい」
それから先生は何かを決心したかのように言った
「生存者は35人中2人・・・一クラス丸々亡くなったわ」
「つっ・・・!!」
佳奈多はさらにもう一つ質問しようとしたが、言葉が口から出ない
そう、質問するのが“怖かった”のである
〈生存者は誰ですか〉
この一問が佳奈多にとってはどんな物より怖かった
「あの先生・・・?」
「何?」
佳奈多は最後の勇気を出していった
「生存者って誰ですか」
その答えが返ってくるのはとても長く感じた
そして答えは返ってきた。
最悪な形で
「・・・棗鈴さんと直枝理樹さんよ」
「え・・・」
佳奈多の最後の勇気もボロボロに砕け散った・・・。